洋二郎の姉説子の長女・香西理子は、4歳から小野アンナさんにヴァイオリンを習っていました。
1950年第19回日本音楽コンクールで1位、それからアメリカのジュリアード音楽院に留学し、ソリストとして活躍していました。
その後、ヴァイオリン演奏の指導に軸足を置くようになり、何人もの素晴らしい弟子に恵まれました。
2012年には「香西理子先生を囲む会」が発足、二年に一度のアンサンブルコンサートが開かれるようになりました。
その「卒寿お祝いコンサート」が、8月12日、京都コンサートホールで開かれ、行ってまいりました。
アイネ・クライネ・ナハトムジークの最初の音で、身震いしました。
素晴らしい表現力を持った演奏家の集いなのだと、はっきり感じられました。
10分の休憩の後、孫弟子さんたちが演奏。
小学5年生の結音さんによるヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」より〈海の嵐〉変ホ長調作品8-5RV.253
小学5年生尚樹君、小学6年生恵一君たちの「2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調
BWV.1043
中学2年生佳穂さん、中学3年生香奈さんによるヴァイオリン協奏曲集「調和の霊感」よりイ短調作品3-8 RV.522
そして、15分の休憩。
ロビーで窓の外を眺めていると、私と同年齢くらいの方に声を掛けられました。
窓外で進む大きな工事の話から、話題が広がりました。
「京都はいい町なのです。コンサートに行くにも気軽に行ける距離で、楽しめるのですよ」
そして、その女性が理子のお弟子さんにヴァイオリンを習っていたことも判明。
「香西先生は、本当に素敵な方ですね」と最後に一言。
私も本当にそう思います。
従姉だからではなく、一人の人生の先輩として、その生きざま、日々の暮らし方に、心打たれることが度々あったからです。
ちなみに、彼女は、銀座現代画廊での洋二郎展以来、ずっと洋二郎展会場でヴァイオリン演奏をしてくれました。
忙しい日々の中、京都から駆けつけ、作品展を祝ってくれたのです。
最後は、理子も加わり、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135。
ヴィオラがまるで皆に語り掛けるように奏で始めると、それに呼応するように、ヴァイオリンが鳴り、その掛け合いに耳傾けるうちに、第九の合唱部分を思い出しました。
耳の聞こえなかったベートーヴェンは、それでも、聴衆と語り合いたかったのではないでしょうか。
時代は変わっても、人の思いはそれほど大きく変化するものではなく、語り合いたい、共有したい気持ちは、秘かに息づいているのではないでしょうか。
ただ、それが上手く機能していないだけなのではないでしょうか。
大きな拍手のあと、中心となって、この会をまとめて来られた岡田光樹さんが、この会の経緯などについて話しました。
聞きながら、小野アンナさんの教えが理子に引き継がれ、お弟子さんに伝わり、孫弟子にも継承された上でのあの素晴らしい音色なのだと、気が付きました。
よい音楽、誠実な演奏は、人の心にエネルギーを与えてくれるのですね。
京都日帰りは、きつかったですが、それ以上に大きな喜びを頂き、幸福感に満たされた私でした。